昇進して部下を持つようになったとき、あなたはどのような気持ちになったでしょうか。
「自分は絶対に部下に慕われる上司になろう」
「尊敬される上司になりたい」
人間の不思議なところは、立場が変わると以前の立場の気持ちが分からなくなってしまうことです。
よく政治家が「国民目線で云々~」と話しているのを聞いて「嘘くさいな」と思ったことはありませんか。
その感覚を、上司であるあなたに対して部下が抱いているかもしれません。慕われようとすればするほど、逆効果になってしまうのです。
部下と良好な関係を築くということは、業務をうまく回していくためです。良好な関係=好かれることではないのです。この目的を取り違えてしまってはいけません。あなたの人気投票(部下からorあなたの上司から)のために部下を使うべきではないのです。
上司たるもの、嫌われてナンボです。
嫌われるのを恐れると本当に嫌われる
特に「自分が部下なんて持っていいんだろうか…」と自信がいまいちないタイプは、部下に嫌われないように下手な媚を売るようになって、結果部下に本当に嫌われてしまいます。
なぜ、このような態度を取ってしまうのでしょうか。
それは、部下を持った時点で、あなたと部下の立場はすでに違っているということを受け入れられてないからなのです。
「昇進しても、俺はお前たちと同じ目線だから」
一見、部下の目線で物事を考えているいい上司っぽい発言ですが、部下からすると「甘えんな」です。
役職手当ももらって部下を率いているわけなのだから、部下たちにできないことを上司目線でしっかりと管理していくのが与えられた役割なのです。
時には、嫌われる役に徹することも必要です。
もちろん、ここで言う嫌われるとは「パワハラをする」とか「セクハラをする」とか「いじめをする」ということではありませんよ。嫌われる役回りを受けることこそが仕事なのです。
問題が起こったときに、なあなあにしない
部下の悪いところをちゃんと指摘できる
できていないことにはきちんとダメ出しする
それをせずに、部下にいい顔を見せようとばかりしていると、最終的に軽蔑されて、管理職失格となってしまいます。
嫌われるというのは勇気がいること。反発も食らうので、精神的なダメージも受けるでしょう。
でも、わざと嫌われる立ち位置を選んでいると、部下にはそれが伝わるようになります。「嫌がらせ」と「嫌われる立場」の違いは分かるのです。
自分に自信がない上司こそ、この「嫌われる役回り」に徹してみるのがいいでしょう。
「そんなことをして、あの人仕事できないくせに何威張ってんだとか思われないだろうか…」などという心配は無用です。
自信を付けるためにも「嫌われたって、それが仕事なんだから平気平気」という感覚を身に付けることで得られる効果は大きいでしょう。
そして、部下もあなたのメリハリのついた管理を見て、嫌いながらも一目置くようになるはずです。
陰で悪口を言われてこそ上司
たまにいるのですが、飲み会で自分の悪口を言われていないか気になって、誘われてもいないのに二次会・三次会までついてくる上司というのは完全にNGです。
また、「あいつは金がないから、飲みに誘ってやろう、奢ってやろう」というのも大きな思い違いです。
飲み会というのは、上司がいないから楽しいのです。上司の悪口を言う場として機能しているのです。
部下のそういうストレス発散の場を上司自ら奪うようなことをすべきではありません。
そもそも嫌われる役割を受けて立っているわけですから、部下はあなたに対して文句があってしかるべきなのです。
それをそのまま溜めこませてしまうと、思いもよらないところで爆発して取り返しのつかないことになりかねません。なので、部下には定期的に文句を吐き出させておく必要があるのです。
陰で悪口を言われているということは、あなたの嫌われる役割はちゃんと機能しているということなので、むしろ「計画通り」と喜ぶべきことです。
ただし、まったく奢らないと今度は「ケチ上司」とのレッテルを貼られてしまうので、数か月に一回くらいは部下を飲みに連れて行ってあげましょう。
部下が取り組んでいる仕事の目途がついたときなど、節目のときが一番いいですね。「ちゃんと見ててくれてるんだな」と部下にも気づかせることができます。ただ、そのときも一次会でスッと身を引くスマートさを忘れてはいけません。
責任は100%上司が取る
ただし、取り違えてはいけないのは、失敗したときの最終的な責任の所在です。
内部だけの責任であればしっかりと部下に自覚させる必要はありますが、上に対する責任だけは部下に押し付けてはいけません。
失敗の原因を探るために、部下が隠そうとしている途中過程のミスをガンガン暴くのは上司の仕事です。それを見逃さずにきちんと叱って、再発しないように教育することが必要です。
嫌な仕事ではありますが、同じ失敗を繰り返さないためには「嫌われ役」として必要なことです。
しかし、最終的な責任を取るのは上司であるあなたです。あなた自らがきちんと頭を下げましょう。
責任まで部下に押し付けてしまったのでは、それは「嫌われ役」ではなくてただの「イヤな奴」です。
このメリハリがあってこそ、ふだん嫌われ役に徹している上司の「頼もしい一面」を見せることができるのです。部下は「怒られてムカついたけど、ちゃんと責任を取ってくれた。次はミスしないようにしよう」と思うようになるのです。
目的はあくまで「仕事をうまく回すこと」
今も昔も、中間管理職というのは非常にストレスの溜まる立場であることは変わりありません。
では、なぜストレスが溜まるのでしょうか。
部下に突き上げられ、上司からは締め付けられる。言われたことをやっていればいい、文句だけ言っていればいいという立場のヒラ社員から、役職がつくことでその「下」と「上」のはざまで調整をするという役割を期待されるようになるのです。
一方通行に自分の言い分を主張していればよかった立場から、逆に上下両方向からそれぞれの「言い分」を受ける立場になるわけですから、ストレスが倍増するのは当然です。
そして、なぜこうした中間管理職が会社に必要かというと、仕事をうまく回すためにほかなりません。別に会社はあなたの好感度をあげるために昇進させているわけではないのです。
訳も分からず嫌われて「うれしいな~」と思う人はいないでしょう。
でも、この仕組みさえ分かっていれば、自分が嫌われることでむしろ仕事がスムーズに進んでいくことを体感できるはずです。そうです、理由がちゃんと分かっていれば、嫌われることを恐れる必要はまったくないのです。
嫌われ上司になって、あなたの上司力をガンガン高めていきましょう!
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