クリントン氏かトランプ氏か?アメリカ大統領選挙候補者に見る迷えるアメリカ人の選択

42eee6143b47672aaad33883f57eac76_s

予備選が進めば進むほど、混迷の色を極めるアメリカ大統領選挙。

単純に候補者たちの属性や主張を見るだけでも、一昔前では考えられないような多様性を垣間見ることができます。

アメリカは変わりつつあるのではないか?

今回の予備選挙で民主党・共和党のそれぞれの候補者を見てそう思っていたのですが、どうも間違いのようでした。

アメリカは”変わりつつある”のではなく、もうすでに”変わってしまった”ようなのです。

スポンサーリンク
レクタングル広告大

民主党の切り札は?

民主党の指名候補に名を挙げている2大勢力と言えば、ヒラリー・クリントン氏とバーニー・サンダース氏です。

ヒラリー・クリントン氏

Hillary_Clinton_official_Secretary_of_State_portrait_crop

まず、民主・共和両党において並み居る候補者たちの中でも最も安パイというか、本命というか、現実的なシナリオなのが、このヒラリー・クリントン氏なのですが、よく考えてみるとクリントン氏が大統領になったらアメリカ史上初の女性大統領になるわけです。

しかも、もっとよく考えてみると、最近のヒラリーさんの活躍っぷりにすっかり失念していましたが、そもそも彼女はあのビル・クリントン元大統領の奥様なのです。元ファースト・レディが、今の大統領選挙の本命。すごい話だと思いませんか。

写真引用元:wikipedia「ヒラリー・クリントン」

バリバリ働くキャリアウーマンの姿のまま政界へ殴り込み

もともと弁護士であったヒラリー氏は、ファースト・レディであった当時から夫であるビル・クリントン元大統領の片腕として活躍をしていました。

奥様に政治活動面でも全幅の信頼を置いていたクリントン元大統領は、なんとヒラリー氏に”医療保険改革問題特別専門委員会の委員長”というポストを与えて、ファースト・レディが正面切って政治に参加するという前代未聞の人事を行ってしまうのです。

アメリカの保険制度の根底を揺るがしかねない”国民皆保険”という政策を打ち出し、その当時は出る杭として打たれてしまい、クリントン政権の失速につながったことは否めません。ですが、クリントン元大統領がこうした大胆かつ異例の政権運営を行うことができたのは、まぎれもなくヒラリー氏の影響と言えましょう。

「文句があるなら、堂々と選挙で政治に参加するわよ!」と言ったかどうかは分かりませんが、その後ニューヨーク州選出の上院議員として正面切って国政に舞い戻ります。

2008年からは第二期オバマ政権の国務長官として、実質、現在のアメリカのナンバー2という位置まで上り詰めたわけです。

初の女性大統領となるか

これだけの政治的な後ろ盾や実績もあるために、ヒラリー・クリントン氏がアメリカ大統領候補の本命と目されるのは当然のような気はしますが、何度も言うように、当選すればアメリカ初の女性大統領になるわけです。

世界的に見ると、いまや女性のリーダーというのは珍しくはありません。ヨーロッパのリーダーであるドイツのメルケル首相や、おとなり韓国の朴槿恵大統領も女性です。

特にドイツのメルケル首相は、ドイツ国内だけでなくEUという広大な枠組みでも大きな存在感とリーダーシップを発揮しています。古くは「鉄の女」と呼ばれたイギリスのサッチャー首相あたりから、こうした女性のトップの歴史というのは脈々と続いているわけです。

自由の国アメリカ。ついに女性大統領が現実のものになるのかもしれませんね。もはや、女性だから珍しいのではなく、いかに政治力があるかというリーダーとしての真価を問うというだけの話なのでしょう。

政治的経験の豊富さが吉と出るか凶と出るか

その一方で、逆にこれだけ政界でバリバリ経験を積んできたクリントン氏は、女性であること以外真新しいことはないと言われてしまうくらい”ザ・ワシントン”であるとも言えます。

女性だけでなく、黒人層からの支持も多く集めているクリントン氏。今のアメリカ人の目に、どう判断されるかが注目されるところでしょう。

バーニー・サンダース氏

Bernie_Sanders_113th_Congressその民主党候補者選びで、クリントン氏の対抗馬とされるのが、バーニー・サンダース氏です。

クリントン氏の独走かと思いきや、意外とこのサンダース氏が奮闘しています。彼が支持される理由をご存知でしょうか。これまでのアメリカの伝統的な考え方とは少々異なる主張によって支持を集めているのです。

写真引用元:wikipedia「バーニー・サンダース」

アメリカにおいてなんと社会主義を主張する

まず、バーニー・サンダース氏は、自分のことを「民主社会主義者」と名乗っているのです。若いころから社会主義者としての活動を行い、アメリカの上院初の社会主義者議員となったのがこのサンダース氏なのです。こういう経歴なので、もともと民主党に所属していたわけではなく、民主党会派の無所属議員として活動をしていました。

彼の主張は、とにかく「貧富の格差をなくす」。そしてこの1点において、彼は若者たちから大きな支持を得ているのです。まさに現在のアメリカの置かれている状況を表している現象だと言えるでしょう。

成功よりも安定を望む若者からの厚い支持

ご存知のとおり、アメリカという国は「資本主義」を体現する国。そのアメリカの若者が支持しているのが社会主義的な主張というわけなのです。かつてのアメリカンドリームというのはどこへ消えたのでしょうか。

このようにサンダース氏が若者から支持されている状況を見ると、成功へのチャンスという夢を掲げた大国アメリカという時代は終わってしまったように感じます。一握りの成功者になるという夢を見るよりも、その一握りの成功者に集中する富をこっちにも分けろ!という方に声を上げるようになったのです。

そう考えると、初の女性大統領よりも初の社会主義者大統領の方がビックリ度合いは大きいですね。アメリカという国の理念が根幹から崩れるわけですから。

カオスすぎる共和党

一方、共和党の候補者選びと言えば、ドナルド・トランプ氏とテッド・クルーズ氏、そしてマルコ・ルビオ氏の三つ巴となっています。

2016.5.6追記:先日インディアナ州の予備選でトランプ氏が勝利したのを受けて、共和党の主流派が(消去法で)推していたクルーズ氏が選挙戦からの撤退を表明し、そして最後に残ったケーシック氏(オハイオ州知事)も撤退。これで唯一残ったトランプ氏が共和党の指名を受けることがほぼ確実となりました。

ドナルド・トランプ氏

Donald_Trump_Aug_19_2015もともと、共和党の本命と目されていたのは、予備選から初期の段階で早々に離脱してしまったジェブ・ブッシュ氏。ジョージ・ブッシュJr.元大統領の弟です。まさに正統派共和党ど真ん中という感じのブッシュ氏がひっそりと誰の目にも留まることなく戦いを諦めた理由というのが、全米どころか全世界に物議をかもしながら登場したドナルド・トランプ氏による、予想以上の”トランプ旋風”なのです。

写真引用元:wikipedia「ドナルド・トランプ」

アメリカンドリームを体現する男

選挙に名乗りを上げた段階では、それこそキワモノというか泡沫候補扱いだったトランプ氏

彼は、ニューヨーク五番街にトランプタワーなるビルを持ち、アメリカ中にホテルやカジノを有するアメリカ随一の不動産王です。しかも、80年代に大躍進をしたあと90年代に一度事業の失敗によって転落の憂き目にあいながらも、不屈の精神で復活を果たし自らの手に不動産王の冠を再び引き寄せるという、まさにThat’s アメリカンドリームな男なのです。

そして、そのトランプ氏の主張というのはどれも過激なものばかりです。

まず、メキシコとの国境に万里の長城らしきものを築き(しかもお金はメキシコ持ちで)メキシコ人の不法移民が入り込まないようにするとか、カリフォルニア州でイスラム教徒による銃乱射テロ事件が起きた際には、ムスリムの入国を禁止すべき発言をしたりとか、1000万人を超えるアメリカの不法移民を一掃するとか、シリアからの移民は絶対に受け入れてはならないなどと言ったように、主に”移民””人種”に関して差別的ととらえられる発言が取りざたされて、アメリカだけでなく世界中のメディアからボコボコに叩かれているわけです。

傲慢で、横暴で、自慢屋なトランプ氏。いいところが一つもないように映ります。

にも関わらず、アメリカ国内では急激に支持を伸ばしているのです。圧倒的な嫌われ者だからこそ、その一方で熱狂的に支持されるのでしょう。

過激で傲慢な主張に熱狂しているのはマニアだけではない

この破天荒な不動産王に、最後の望みをかけてみたい。そういう考えのアメリカ人は、想像以上に多く存在しているということです。

もともとトランプ氏の支持者は白人の富裕層くらいしかいないだろうと考えられてきましたが、とんでもない!今や、トランプ氏の支持者のメインとなっているのは白人の中間層や貧困層なのです。

要するに、トランプ氏の打ち出す移民に対する厳しい姿勢というのは、今の白人社会の意見を実に明確に反映しているわけなのです。

大義名分をすっ飛ばす豪快さ

しかし、ここは自由と平等の国アメリカ。本来そういった人種差別的な考えを前面に打ち出すのはアメリカ国民として”やってはいけないことNo1”だったのです。特に1960年代の公民権運動を乗り越えて以降、たった今までは。

地元にメキシコからの不法移民が増えて治安が悪くなっても、自分の仕事が移民によって奪われて失業してしまっても、自由と平等を信条とするアメリカ人たるもの、おおっぴらに「ふざけんな!出ていけ!」と言い放ってはいけなかったのです。実際は言っていたでしょうけれど(笑)。それでも建て前としては別の大義名分が必要だったんです。テロとか。イラクの独裁者による核疑惑とか。

そして、トランプ氏はそうした大義名分をあらかたすっ飛ばして、とにかく移民反対の強硬姿勢を貫くことで、富むも貧しきも含めた白人層からの大きな支持を得ているわけです。歴史的に常に優位とされてきた白人だからこそ、声をあげることができずにいた「アンタがそれを言っちゃおしまいよ」というようなことを、トランプ氏が何のためらいもなく豪快に代弁してくれちゃったわけです。

最もふつうのアメリカ人が、最も怒っているという事実

われわれが想像する以上に、これまで我慢を強いられてきた白人たちの気持ちが一気に爆発した結果が、このトランプ旋風となっているのではないでしょうか。

要するに、トランプ氏支持が高まる=既存のアメリカ政治への不信が強くなっている。この表れにすぎないのです。よく「怒れるアメリカ人がトランプ氏を支持している」と言われていますが、今のトランプ氏の支持層を見てみると、逆にごくふつうのアメリカ人こそが支持しており、それはつまり、ふつうのアメリカ人こそが今の政治に怒っているぞということなのでしょう。

ちなみに、トランプ氏は共和党内でも敵が多いようです。そりゃそうでしょうね。

マルコ・ルビオ氏

一方で、現在共和党の主流派が支持しているのはマルコ・ルビオ氏です。

200px-Marco_Rubio,_Official_Portrait,_112th_Congress父親がキューバ人であり、まさにライバルであるトランプ氏が排斥を求めるヒスパニック系移民の家系出身。まだ44歳と若く、次世代のアメリカをけん引するリーダーというイメージをもって本選で(クリントン氏と)戦えるのはルビオ氏以外にないというのが党中枢部の考えのようです。

政策的な主張は特に目新しいものはなく、そういう意味では地味です。なので地道にコツコツといかに票を伸ばせるかというところでしょう。

写真引用元:wikipedia「マルコ・ルビオ」

(2016年3月16日:追記)その後のミニ・スーパーチューズデー。地元フロリダ州でトランプ氏に負けたルビオ氏は、選挙戦からの撤退を表明しました。ルビオ氏を支持してきた共和党の中枢部が今後どのように動くのか、注目されるところです。

テッド・クルーズ氏

Ted_Cruz,_official_portrait,_113th_Congressそして、実際にトランプ氏と接戦を繰り広げているのは、実はこのルビオ氏よりもクルーズ氏なわけです。クルーズ氏も、父親がキューバ移民という家系なのはルビオ氏と同じです。しかし、ルビオ氏以上にその政策の特徴というものはまったく見えてきません。しかも、共和党の同僚議員たちからはあまり支持されていないようです。

では、そんなクルーズ氏がなぜトランプ氏と互角に戦っているのか。単純に消去法ですね。共和党内の反トランプ派の票が、必然的にこのクルーズ氏と上述のルビオ氏に流れているわけです。その中で、現時点ではルビオ氏よりもクルーズ氏に流れている票が多いというくらいのことでしょう。

写真引用元:wikipedia「テッド・クルーズ」

オバマ大統領の当選から明らかに変わった流れ

200px-President_Barack_Obama2008年にオバマ大統領が当選したとき。初のアフリカ系アメリカ人大統領誕生というあの瞬間!ああ、ついにアメリカは黒人の大統領を輩出するまでになったのだと、非常に感慨深い思いにふけったのを覚えています。

公民権運動があったのは、そのたった50年前。それまで白人と黒人は完全に分離され、公然と差別が行われていたのです。それまで黒人には実質的な参政権すらなかったのです。それからたった半世紀で、アメリカはアフリカ系アメリカ人の大統領を擁するまでになったのです。

写真引用元:wikipedia「バラク・オバマ」

なんたる進化の早さ!ものすごく歴史的なターニングポイントを見た気がしました。よその国のことながら、世界は本当に21世紀という新しい一歩を踏み出しているんだという実感を持ったのです。

勝利宣言のスピーチでオバマ大統領が言った「Yes, we can!」。キャッチーなこのフレーズは、黒人の血を引くオバマ大統領が言ってこそ説得力にあふれていましたし、まさに新時代の幕開けを象徴していたと言えるでしょう。

…しかし。

現実はそんなに甘くありません。弱腰外交と揶揄されるように、2期8年にわたるオバマ政権は世界の諸問題を解決どころか結果的に増長させている現状です。いや、これがアメリカ以外のどこか世界の1国の話ならばそんなに問題にはならないでしょう。しかし、そこは世界のリーダーたるアメリカ。

特に第二次世界大戦後、世界の安全保障をコントロールしていたのは紛れもなくアメリカです。その良し悪しは置いておくとして、冷戦後の世界で実質的に一強となっていたアメリカの判断が、世界の進む方向を握っていたのは確かです。

そんな中飛び出した、シリア内戦問題についてのオバマ大統領の発言。

「アメリカはもう世界の警察官になるつもりはない」

当時、えっ!?何を言い出すのね?と思った人も多かったでしょう。

正直、一方的な理由をつけて、内政干渉ともとれる力技で他国のもめごとにいちいち介入してきたアメリカにうんざりしていたのは認めます。アフガン戦争やイラク戦争のように。

しかし、「21世紀という新しい一歩」「世界のターニングポイント」ってこういう意味じゃないんだけど…と一抹の寂しさと何とも言えない頼りなさ・不安感を覚えたのも事実です。

なにも戦争で抑えこむ必要はありません。それ以上に重要なのは外交です。しかしこのオバマ外交こそがアメリカ国内で「弱腰」とみられ、オバマ政権が急速にその求心力を失っている原因でもあります。

混迷と皮肉しかない次期アメリカ大統領選挙

b6ab5f6a26b67711aba47913f656fae5_s

次の大統領選挙の混迷っぷりを見るにつけ、「ああ、今アメリカは大きな転換点にきているんだろうな」と思っていました。

しかし、実はアメリカは今が転換点なのではなく、オバマ大統領が誕生した時点でもうすでに転換してしまったのではないでしょうか。アフリカ系アメリカ人の大統領の誕生は、自由を標榜してきたアメリカという国にある種の達成感を与えたに違いありません。もう、それ以前の一体となって何か(つまり自由)を目指していた時代とは違うのです。アメリカという国も、アメリカ人そのものも

だからこそ、今回のこの選挙戦では、言葉は悪いですがなんだかデコボコした候補者がしのぎを削る魑魅魍魎(失礼)な世界が繰り広げられているような気がしてしまうのです。

古き良き強いアメリカへの回帰は、皮肉にも政治経験のない毒舌トランプ氏に向かっています。

アメリカが建国以来掲げる平等思想は、皮肉にも社会主義者であるサンダース氏に向かっています。

そして最も皮肉なのは、一番現実的で無難な候補者が女性初の大統領を目指す(しかもファースト・レディ経験者)ヒラリー・クリントン氏であるということです。本来であれば、女性初の大統領となるかというだけでも大きな注目点となりえたはずですが、ほかの候補者の意外な奮闘ぶりによってその個性が埋もれてしまっている気がしないでもありません。

混迷の行く末に、どんな未来が待っているのでしょうか。

アメリカの未来は世界の未来…だったはず。その選択も含めてアメリカ国民の動向に、この選挙戦の動向に注目していきたいところです。

こちらの記事もあわせてどうぞ!

・混戦のアメリカ大統領選挙!予備選挙~本選まで複雑難解な仕組みをシンプルに解説

スポンサーリンク
レクタングル広告大
レクタングル広告大
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA